第2回:「死人テスト」で分かる!従来型就業規則の問題点 <連載> 服務規定作成のための実践ガイド(全7回)


こんにちは、分かりやすさNo.1社労士の先生の先生、岩崎です!

前回は、就業規則が「読まれない」理由として、禁止事項中心の構成に問題があることをお話ししました。

今回は、行動分析学の「死人テスト」という概念を使って、従来型の就業規則がなぜ機能しないのかを具体的に検証していきます

「死人テスト」とは何か?

行動分析学には、「行動」を定義するための有名な基準として「死人テスト(Dead Man’s Test)」があります。これは非常にシンプルな考え方です。

「死人にできることは、行動ではない」

つまり、死人にできること(=行動ではない)とは、「文句を言わない」「遅刻しない」「ミスをしない」「場所を移動しない」といったものです。これらは「状態」や「非行動」であって、本当の意味での「行動」ではありません。

一方、死人にできないこと(=行動)とは、「挨拶をする」「始業5分前にデスクに着く」「手順書を指差し確認する」といったものです。これらは具体的な「行動」です。

人が何かを達成し、成長するためには「行動」が必要です。しかし、従来の規則は「死人にもできること」ばかりを人間に求めている傾向があるのです

厚生労働省モデル就業規則の問題点

では、具体的に厚生労働省が公開している「モデル就業規則(令和7年12月版)」の服務規律を見てみましょう。これらは法的な雛形としては標準的ですが、従業員の行動指針としては具体性を欠いています。

 

問題事例①:抽象的な精神論

(服務)第10条には、「労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに……」という記載があります。
ここでの問題点は、「誠実に」という表現が主観的であり、何をもって誠実とするかが曖昧なことです

上司の顔色を伺うことが誠実なのか、顧客のために上司に意見することが誠実なのか、基準が不明確です。このような精神論は、具体的な行動変容を生みません。

 

問題事例②:死人テスト不合格の規定

(遵守事項)第11条第3項には、「勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと」とあります。また同条第4項には、「会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと」とあります。

「離れない」「しない」は、死人であれば完璧に達成できてしまいます。これらは「問題を起こさないこと」を求めていますが、「成果を出すために何をすべきか」は示されていません。

こうした規定ばかりが並ぶと、従業員は「余計なことをして叱られないように、何もしない(死人に近づく)」という消極的な防衛姿勢をとるようになってしまいます

「行動」を求めない規則の限界

従来型の就業規則の最大の問題は、従業員に「行動」を求めていないことにあります

「○○しないこと」という規定は、最低限の秩序を守るためには必要ですが、それだけでは従業員の成長や組織の発展につながりません。

次回は、ネガティブリスト(禁止規定)の必要性と限界について、より深く考えていきます

禁止事項をすべてなくすわけにはいきませんが、それだけでは不十分な理由を解説します。

 

■誰よりも顧問先を大切にしたい社労士の皆様へ!
「3アカデミー」オンラインサロンでは、さらに踏み込んだノウハウも共有していますので、ぜひご参加ください!
↓↓↓
https://academy.3aca.jp/2024a/