第5回:2026年改正の核心①「労働からの解放」を法で保障する <連載>労働基準法・改正の40年史と2026年大改正の行方(全6回)

勤務間インターバル、連続勤務の上限、法定休日の特定、つながらない権利

 こんにちは、分かりやすさNo.1社労士の先生の先生、岩崎です!

前回は、いまの労働基準法が抱える3つの構造的な課題を整理しました。第5回からは、いよいよ2026年に向けた改正の方向性そのものに踏み込みます。今回のキーワードは「労働からの解放」です。これまでの「働く時間の長さを規制する」という発想から、「働かない時間、休む時間を保障する」という発想への、大きな転換が起きようとしています。

発想の転換 ― 規制の物差しが変わる

2025年・令和7年1月の労働基準関係法制研究会報告書が示した方向性の核心は、最長労働時間の規制から、労働からの解放時間の保障へというパラダイムシフトです。

従来は「1か月に何時間まで」という総量の規制が中心でした。これからは、それに加えて、日単位・週単位で「労働から完全に解放される時間」をどう法的に保障するかが問われます。本回で取り上げる4つの論点は、いずれもこの新しい発想の表れです。

1 勤務間インターバル制度の義務化

勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻までに、一定時間以上の休息を確保する仕組みです。睡眠時間の確保と疲労の回復に直結する、シンプルですが効果の大きい制度です。

現在は労働時間等設定改善法において努力義務にとどまっていますが、これを法的な義務へと格上げする議論が加速しています。日本での導入企業の割合は、令和7年時点で6.9%と低迷しています。導入しない理由の57.3%は、超過勤務の機会が少なく必要性を感じないというものでした。

今後は、EU指令の最低基準である11時間にならい、原則11時間の休息時間の確保を義務化する方向で検討が進んでいます。ただし、業種の実態に配慮し、労使の合意による例外措置や、代償休息の付与といった代替措置を柔軟に認めながら、段階的に義務化へと舵を切る方向性が濃厚です。

2 連続勤務の上限規制 ― 14連勤の禁止

2つ目は、連続勤務の上限規制です。現行の労働基準法第35条は、毎週少なくとも1回の休日を原則としつつ、例外として4週間を通じて4日以上の休日を与える変形休日制を認めています。

ここに、見落とされがちな構造的な欠陥があります。変形休日制のもとでは、4週間の最初と最後に休日をまとめて配置すれば、理論上は最大48日間もの連続勤務が合法になってしまうのです。実際、14日以上の連続勤務をしている労働者が1.2%存在するというデータもあります。

精神障害の労災認定基準では、2週間以上にわたる休日のない連続勤務が、強い心理的負荷と評価されています。これを踏まえ、2025年報告書は、たとえ36協定に休日労働の条項を設けた場合であっても、13日を超える連続勤務をさせてはならないという絶対的な上限規定を、労働基準法に新設することを強く提言しています。実務上は「14連勤の禁止」と覚えておくと分かりやすいでしょう。

3 法定休日の特定義務化

3つ目は、法定休日の特定義務化です。完全週休2日制が定着するなかで、1週間のうちどの日が法定休日であり、どの日が所定休日なのかが、就業規則の上で明確になっていないケースが少なくありません。

法定休日の労働は割増賃金率35%、所定休日の労働は時間外労働として25%と、適用される割増率が異なります。どちらの休日かが特定されていないと、割増賃金の計算をめぐる労使のトラブルの原因になります。 そこで、法的な予見可能性を高め、休息の確実な取得を促す観点から、就業規則などにあらかじめ法定休日を特定することを、法律上義務づけることが検討されています。就業規則の整備という、社労士の先生方の本来業務に直結する論点です。

4 つながらない権利の実質的なルール化

4つ目は、つながらない権利、英語でRight to Disconnectと呼ばれる論点です。ICTの発展により、テレワーク中も、休日や深夜を問わず業務連絡が届き、労働者が心理的に業務から解放されないという問題が顕在化しています。

諸外国を見ると、フランス、スペイン、イタリアなどで法制化されている一方、ドイツでは法的な措置に懐疑的な立場が示されるなど、対応はさまざまです。日本では、職務の範囲が曖昧なメンバーシップ型雇用の特性や、個人の働き方の裁量という事情もあり、労働基準法に直接の権利や罰則をただちに設けることには慎重な意見が多数を占めています。当面は、勤務時間外の連絡の取扱いに関する労使のルールづくりや、ガイドラインの策定を促す形で施策が講じられる見通しです。

「労働からの解放」に関する論点と方向性

論点現状の課題今後向かう方向性
勤務間インターバル努力義務にとどまり、導入率は6.9%と低水準原則11時間の休息確保を義務化(代替措置は柔軟に)
連続勤務の上限変形休日制のもとで最大48日の連続勤務が合法になりうる13日を超える連続勤務を禁止(14連勤の禁止)を新設
法定休日の特定週1回の休日は義務だが、曜日の特定に明文規定がない就業規則などで法定休日をあらかじめ特定することの義務化
つながらない権利法的根拠がなく、時間外の業務連絡に明確な制限がない直接の権利創設には慎重。社内ルール・ガイドラインによる実質的な制限

▶ 次回予告

次回・第6回は、いよいよ最終回です。柔軟な働き方の再構築を取り上げます

副業・兼業の割増賃金、フレックスタイム制の部分適用、週44時間の特例の撤廃、そして裁量労働制をめぐる労使の激しい攻防。最後に、これら全体が向かう先である「フレキシキュリティ」という思想で、連載を締めくくります。

 
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